新耐震基準の木造建築物の倒壊の原因分析
今回の能登半島地震、木造建築物に大きな被害が出ました。建物の下敷きになり、亡くなられた方も多数おられます。
平成28年4月14日及び16日に発生した熊本地震でも震度7が2度観測され、大きな地震により建築物に甚大な被害が発生しました。
国土交通省が建築研究所と連携して「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」を設置し報告書を取りまとめたので、いずれ来るだろう東南海トラフ地震に備えるための参考にしていただきたいと思います。
木造建築物の被害状況・原因分析(旧耐震基準)
日本建築学会が益城町の地震動が大きく建築物の被害が著しい地域において調査を実施
旧耐震基準(昭和56年5月以前)の木造建築物の倒壊率は28.2%
新耐震基準(昭和56年6月~平成12年5月)の木造建築物の倒壊率は8.7%
新耐震基準(平成12年6月以降)の木造建築物の倒壊率は2.2%
旧耐震基準と新耐震基準の木造建築物の倒壊率に顕著な差があったのは、新耐震基準は旧耐震基準の約1.4倍の壁量が確保されているためと考えられる
住宅性能表示制度による耐震等級3(倒壊防止)の住宅は新耐震基準の約1.5倍の壁量が確保されており、耐震等級3の木造建築物は大きな損傷が見られず、大部分が無被害であった。
【必要壁量】
旧耐震基準
↓ 約1.4倍
新耐震基準
↓ 約1.5倍
耐震等級3
木造建築物の被害状況・原因分析(新耐震基準以降)
新耐震基準導入以降で倒壊した建築物77棟の被害要因
1)著しい地盤変化の影響(2棟)
2)隣接建築物の衝突による影響(1棟)
3)蟻害(2棟)
4)現行規定の仕様となっていない接合部(73棟)
平成12年以降の接合部の仕様を明確化した平成12年6月以降に建築されたもので倒壊したものを見ると、
被害要因は、著しい地盤変化の影響や震源や地盤の特性に起因して局所的に大きな地震動が建築物に作用した可能性があるものを除き、現行仕様となっていない接合部が倒壊の原因となっている。
⇒新耐震基準導入以降のものについては、接合部の仕様が不十分であったものに倒壊が多く見られたことから、ホールダウン金物で接合するなどの接合部の補強が被害の抑制につながります。
また、シロアリの被害があると柱がスカスカ状態で、建物の倒壊につながる為、定期的な防蟻対策が必要です。
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