建築基準法をみたすだけで大丈夫か?
最近よく耳にする住宅性能表示制度による耐震等級ですが
実は、「建築基準法の壁量計算」と「性能表示の壁量計算」は異なった式を使っています。
耐震性能では建築基準法レベルを「耐震等級1」、「耐震等級2」は基準法の1.25倍「耐震等級3」は基準法の1.5倍の性能とされていますが、異なった計算方式を使っているのに、本当にそうでしょうか?
また建築基準法を充たすだけで、住まいは大丈夫なのでしょうか?
建築基準法の壁量は構造計算の3/4の性能しかない
いまさらですが、500㎡以下の木造の2階建(もう少し細かい規定あり)では構造計算をしなくても家が建てれます。
確認申請の提出書類に構造計算書が義務付けられてません。
資格をもった建築士が仕様規定に則して四号建築物(木造住宅)を設計していれば、たとえ構造計算をしなくても建築基準法に定める構造耐力を有している家だと認められるということです。ちょっとびっくりですよね。
しかし、構造計算書が義務付けられてませんが、建築基準法では地震力や風圧力などの水平力に抵抗するために必要な壁量が定められています。
ちょっと整理すると
壁量計算とはこういった地震力や風圧力などの水平力に対して建物の構造が安全であるように耐力壁の量や配置などを簡易な計算で確かめる方法です。
構造計算では水平力だけでなく鉛直力に対しても建物の構造が安全であるかを確かめる計算です。
ざっくり簡単に言えば、500㎡以下の2階建ての木造住宅では、構造計算しなくても家は建てれるが、必要な壁量は規定されているとなります。
性能表示制度で求められる壁量設計は、許容応力度計算を行った場合と同程度の必要壁量が求められるため、概ね構造計算を行った場合と同じ壁量になります。!
またざっくりいうと、性能表示制度でいう壁量計算は建築基準法より厳しいということになります。
住宅性能表示では、「耐震等級1」は建築基準法を満たせばよく、壁量が数値で規定されていません。そこで、「耐震等級2」の必要壁量から1.25で割り、性能表示で規定している「耐震等級1」の値を求めると
建築基準法の壁率は、性能表示制度における「耐震等級1相当」の数値より19%から29%小さい。
つまり、建築基準法の壁量計算で実現できる耐力は「構造計算で必要とされる耐力を満たしていない]ということになります。
建築基準法で担保している性能は高くないのです。
建築基準法の必要壁量は耐震等級1の約3/4倍しかないので、耐震等級3の必要壁量は建築基準法の1.5倍ではなく、2倍の壁量ということになります。
木造住宅の耐震性能は格段に向上している
2016年の熊本地震では、2000年以降に建築された木造住宅で、全倒壊は6%、半壊は3%でした。
そもそも熊本地震は震度7が2回という激震で、プレハブ住宅でも倒壊したものがあるほどの想定を超える揺れでした。
2000年の建築基準法の改定により、木造住宅の性能は格段に向上しました。
東日本大震災では、1階部分が津波で大きくえぐられているにも関わらず、倒壊せずその後の余震でも耐えた家や、べた基礎ごと浮いて移動した家など、昔の住宅では考えられない別次元の建物になっています。
さらに、木質系の新しい材料の開発は進化を続け、CLPパネルや長ビスの開発、ホールダウン金物(地震時や台風時に柱が土台や梁から抜けるのを防ぐために必要不可欠な金物)の開発によって、耐震性がさらに高まっています。
実際、熊本地震でも耐震等級3の住宅は被害が軽微にとどまっています。
耐震等級3の性能の家は、命が助かる家から、補修は必要かもしれないが大地震後も住み続けられる家に進化しています。
関連した記事を読む
- 2024/10/14
- 2023/06/04
- 2023/01/16
- 2023/01/10