中古住宅の建物評価の実態ご存じですか? part1
国交省は中古住宅の流通量を増やそうと、さまざまな施策を打ち出しています。
建物状況調査(インスペクション)もその一つです。
そして、国交省のHPの中で中古住宅の建物評価の実態と今後の建物評価のあるべき姿について話しています。
中古住宅の建物評価の実態
●中古戸建住宅の評価実務においては、比較的簡便な手法により求められた再調達原価を基に、建物の想定上の耐用年数から実際の経過年数を踏まえて一律に経年減価する形で価格を計算している。(マンションは取引事例比較法)
●耐用年数の設定においては、木造住宅の場合、他に根拠がないため税法に基づく財務省令上の耐用年数である22年等を参考にせざるを得ず、20~25年の経済耐用年数が設定している。
●適確にリフォームが行われていても、リフォームによる物件価値の向上を客観的に評価する基準・手法が確立されていないため、リフォームが建物価値の上昇を伴わないことが多い。
●宅建業者向けの『価格査定マニュアル』においては、一律の経年減価を行う手法を2002年から改め、部材ごとの耐用年数設定を行う計算ソフトを配布しているものの、必ずしも取引実務一般には普及していない。
経年減価の計算方法(鑑定評価・金融実務共通)
建物の評価額=再調達原価×経過年数÷耐用年数
【私見】
●日本は、木造住宅でも、坪30万円~坪100万円まで幅広い住宅が建築されています。再調達原価を計算する場合に、評価する建物が幾らくらいの建物なのかを判別できなければ、再調達価格の算出そのものがいい加減な価格になってしまいます。
●ですから、『木造・100㎡・4LDK・築10年の家に住んでいるんだけど幾らくらいで売れますか?』とお電話やメールで聞かれても、私にはお答えできません。
●例えば、『○○建設の建売りに住んでいるんですけど、メンテナンスもバッチリでそのまま住めます』とまで言われましたら、設計図書一式を送っていただければ想定価格をお出しすることはできます。
●一括査定サイトで入力された『構造・面積・築年数・間取り』で机上査定で評価額を出すこと自体が無理なんです。訪問査定以外は適切な金額は出ないと思ってください。
それでも、だいたい幾らくらいになりますか?って聞かれるんですよね。困ったものです。お気持ちはわかりますが、車のように簡単には出せません。
なぜ国は建物評価を改善したいのか?
●地価の右肩上がりの上昇が見込めない中、住宅と建物部分が20年で一律に減価する形では、中高年層の住み替え資金が確保できないが、建物評価の改善と中古住宅流通促進により、ライフサイクルの中での住み替え・生活資金が確保できるから。
●中古住宅の価格が経年で一律に減価せず、市場における中古住宅の資産価値が高まれば、ローンが組みづらくなる高齢期に入っても、新たな持ち家への住み替え可能性を大きく高め、新築・中古を含めた住宅需要の拡大をもたらすから。
【私見】
これからは、メンテナンスがしっかり行われた良い住宅ほど高い価値がつく時代にしたいと言うわけです。
しかし、中古住宅購入者は、一番のメリットとして『価格が安い』ことをあげています。
デメリットとしては『リフォームやメンテナンス費用がかかる』、『住宅設備が古い』をあげています。
購入者は、安心できる中古住宅が買えるようになることは喜ぶこと間違いありませんが、これまでより金額が高くなることを受け入れるのはそんなに簡単なことではないと思います。
●買主様が求めているのは、『新築住宅より割安感があり、構造や設備も安心して長く住める中古住宅』ですよね!
●品質に対する不安を取り除いてあげるのが一番です!
●残念ながら、日本人は建物の事前メンテナンスをするのが嫌いな傾向にあり、雨漏り等の実害が起きるまでメンテナンスをしない傾向にあります。ここが改善されないかぎり、質の良い中古住宅は増えないと思います!
●私なら、木造なら、2000年以降の建物で、設計図書一式がしっかり完備されていて、インスペクションに合格する建物をお勧めします!
●もっと言えば、国や自治体は解体費用の補助をもっと出して、耐震性等、信頼性のない住宅の撤去に励むべきで、いたずらに築年数の古い住宅の再生ばかりに目をやるべきではないと思います!
まずは、残すべき住宅と壊すべき住宅の選別をする、ここからです!
現在は、この基準が無いに等しい。このままでは質の悪い再生住宅が市場に流れ込みます。
後で困るのは購入した消費者です。国の施策の踊らされて、質の悪い割高な中古住宅を購入しないよう注意しましょう!
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