相続税の申告期限までに遺産分割できず、特例が使えない場合の救済措置
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です。
相続財産が分割されていない場合であっても、上記の期限までにしなければなりません。そのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する法定相続分どおりに分けたものと仮定して、相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。
この場合、相続税の特例が適用できない申告になります。
①配偶者の税額軽減
亡くなった方の配偶者が相続する遺産の額が「法定相続分相当額」又は「1億6000万円」のうち大きい金額までは、配偶者に相続税がかかりません。
配偶者が法定相続分にかかわらず、1億6000万円以下なら相続税はかからず、またどんなに多くの財産を相続しても、法定相続分の範囲内なら、相続税はかかりません。
但し、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。
申告期限までに遺産分割できない場合の、救済措置①
様々な事情から、申告期限までに遺産分割できない場合、以下のような救済措置があります。
相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限までに分割されなかった財産について、申告期限から3年以内に分割したときは税額軽減の対象になります。
なお、相続税の申告期限から3年を経過する日までに、分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。
②小規模宅地等の特例
相続によって取得した財産のうち、亡くなった方、又は亡くなった方と生計を共にしていた親族が、事業や居住の用に供していた宅地等について、評価額の一定割合を減額する制度です。
居住用宅地は330㎡まで、貸付地以外の事業用宅地等は400㎡までについては、相続税の対象となる評価額から80%減額されます。
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例の適用を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。
申告期限までに遺産分割できない場合の、救済措置②
申告した後に、相続財産の分割が行われ、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告または更正の請求をすることができます。
この修正申告または更正の請求において上記の特例を適用することができますが、特例の適用ができるのは、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合に限られます。
注意が必要なのは、修正申告と異なり、更正の請求ができるのは、分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内です。
農地等の納税猶予制度→期限内申告
農地等を相続した人が、農業を営む間、相続税の納税が猶予される制度です。
農地の場合、農業投資価格(土地を農業に使用することを前提に国税局長が決定した価格)を超える部分に係る相続税の納税が猶予されます。農業投資価格は、かなり低く設定されているため、相続税の大部分の納税が猶予されます。
この農地等納税猶予税額は、特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合等に免除されます。
農地等の納税猶予制度については、相続税の申告書を期限内に提出するとともに農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。
猶予期間中は、相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項を記載した届出書を提出しなけれ
ばならず、継続届出書の提出がない場合には、この特例の適用が打ち切られ、農地等納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。

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