売主の告知義務と責任
売主が告知書に記載した内容について、どこまで責任を負うべきでしょうか?
売主の告知義務は、情報格差の解消のため
売主の告知義務は、売主・買主の情報格差を解消するためのもので、売主が知っている(認識している)重要な情報について告知を行う義務があります。
買主が契約のために、自ら情報収集して取引するか否かを、自分で決めるのが取引の原則ですが、買主が情報収集できない内容について、売主が知っていながらそのことを告げずに契約すると、買主に不利となる(不公平な)取引になってしまいます。
最二小 平成5年4月23日の判例において
「信義則上、売主のは当該情報等を告知したうえで、取引を行う義務がある」とされました。契約の判断基準となる重要な情報について、売主と買主の情報格差を解消するためです。
認識していない場合、告知義務がない
「告知がなかった事項は、売主の告知義務違反を問える」のかと思ってしまいますが、そうではありません。
売主が認識していないことや知らない情報についてまで、調査して告知する義務はありません。(東京地裁令和4年11月22日判決)告知はあくまでも売主が認識している範囲で行うものです。
相続で取得し、告知できる情報が少ない場合
相続などで不動産を取得し、その不動産に居住したことがなく、買主に告知できる情報が少ない場合はどうしたらよいのでしょうか?
それは、契約書に告知できる情報が限られることを明記しておくことです。
例文
「 売主は本件土地に居住したことがないため、よって、本件土地の状況(騒音、臭気、振動、電波障害、近隣の建築計画、近隣との申し合わせ事項など)は告知できる情報がないことを、買主は容認するものとします。」
「売主は本物件を最近相続により取得したもので、本物件に居住したことがない。よって、本物件の状況について告知書を作成するための情報がないため、売買契約書の条文(物件情報の告知)にかかわらず告知書を交付しないことを買主は容認する」
売主の告知には限界がありますので、買主にそのことを理解して購入していただくことがトラブル回避につながります。
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