借地制度の歴史ご存じですか?
明治29年(1898年)の明治民法制定当時、賃借権は20年を超えることができず、借地も借家もすべて定期契約でした。
その後、大正10年(1921年)に借地法が制定されましたが、賃借権の存続期間は20年を超えられないため、強い立場の地主の要望により、短期間の借地契約が多かったそうです。
ところが、昭和16年(1941年)、太平洋戦争に伴い戦時緊急立法として借地法が改正され、存続期間が満了しても正当事由がなければ地主は更新を拒絶できない事となり、借地人の保護が強化されました。
あくまで、出征兵士留守宅の居住の安定等を守る為の戦時緊急立法だったのですが、戦後も廃止どころか、ますます借地人の保護が強化されました。
借地に自らが居住するためであっても、当然には期間満了後に返還を受けることができないだけでなく、仮に返還される場合でも更地の7-8割もの立退料を命じられたり、更新時の賃料も市場賃料に合わせた改訂は困難でした。
このように借地人の立場が有利なことから、所有者の新規借地供給動機はきわめて小さくなり、借地市場は縮小していきました。
そして、日本の借地制度の歪みは土地の有効利用にも反する結果となりました。
その後、平成3年(1991年)に借地法と借家法が改正され借地借家法となり、その時に定期借地権制度が創設され、平成4年(1992年)施行されました。
ですから、土地を相続されたお客様から、借地の返還について相談を受けるのは旧法で契約された借地がほとんどです。
この場合、特約に「借地人が増改築や建替え等を行うときは地主の承諾を要する」と記載してあるかどうかが非常に重要になります。
これは、旧借地法では、借地期間満了の前でも建物が朽廃すると借地権が消滅するとされているからです。
また、定期借地権制度が出来たものの、旧法で契約した借地権の更新については旧法が適用されますのでご注意ください。
平成4年に創設された定期借地権制度ですが、融通が利かないところがあります。
まず、期間に関して、居住用で50年未満、事業用で10年未満は絶対に不可能ですが、当事者が完全に合意している以上、居住用、事業用問わず長短問わずいかなる期限も有効とすべきではないかとの提言もあります。
さらに、定期借地上の建物に普通借家が存在することが問題です。
しかし、事前の特約がない場合、借地人は取り壊しを前提に利用することとなるため、定期借地期間満了時の建物の残存価値を高めるインセンティブを持たず建物が荒廃する可能性も指摘されています。
定期借地契約期間終了時点での建物の状態いかんによって、公正、適切に存続・除却を選択できる制度の必要性も問われています。
以上、定期借家推進協議会の「早わかり定期借地権」から抜粋加筆しました。
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