隣地所有者との争いは契約不適合責任になるか?
不動産の仕事をしていると、近隣とのトラブルのご相談を受けます。
ブログを見られた兵庫県や埼玉県など、遠方にお住いの方からもお電話をいただくことがあります。
●隣人にお願いしても隣から伸びてきた樹木の枝を、切らせてくれない
●ブロック塀がこちらに側に傾いており危険だが、隣人が何もしてくれない
●隣人の車が道路にはみ出して駐車しており、自分の車の出入りの邪魔だがどうしたらいいか?
など、不動産取引に関係ないことなどもあるのですが、具体的な法的なアドバイスは非弁行為にあたりできませんが、
過去の同じようなケースで、こういう風に解決したことがあるというような話をしています。
隣接地との紛争は、契約不適合責任が認められる可能性がある
隣地との関係で、具体的に紛争が生じていた、あるいは双方の言い分が異なり疑義が呈されていたなどの事情があることを、買主に告知(説明)せずに、内緒で売却し、その後、購入した者と隣地所有者との間でトラブルになってしまった場合、不動産売買契約において、契約不適合責任が認められる可能性が高いです。
売買物件に契約不適合がある場合、基本的に売主は買主に対して、補修や代金減額、損害賠償や解除といった契約不適合責任を負います。
過去の判例で、
近隣とのトラブルを知らずに土地を購入した買主が裁判を起こし、
隣地の方からの建築妨害、脅迫的暴言が
土地の瑕疵にあたると認められた判決があります。(東京高裁平成20年5月29日判例)
古いブロック塀には注意
土地を売買する場合に、古いブロック塀が越境していたり、逆に隣地のブロック塀がこちら側にはみ出ていたりすることがあります。
境界杭がない場合だと、境界確定して初めて越境していたと判明する場合があります。
境界杭がない場合や、越境していそうな古い塀などの工作物がある場合、先行して売主様に測量をお願いすることがあります。
契約前に越境物が判明していると、事前に隣接地の方と「覚書」を締結しておけ、買主側にも説明し納得していただいたうえで売買契約が締結できます。
隣地所有者の署名や押印などがいただけないため売買契約が白紙になるなどのリスクはなくなります。
隣地の擁壁が越境がなくとも、境界ギリギリに造られている場合、地中の擁壁の基礎が数センチ越境している場合もあります。このような場合も、事前に可能性を告知しておかないと、契約不適合責任が認められる可能性が考えられます。
マンションの隣接するお部屋でのトラブル
マンションのお隣とのトラブルのケースをご紹介します。
住まなくなったマンション売却の依頼を受け、内覧希望のお客様が来られる前に、換気をしようと現地の鍵を開けに行ったところ、玄関の扉がべとべととしており、何かをかけられたようでした。
内覧後に、売主様にご連絡したところ、「お隣の方の仕業だと思う」という返事がありました。
実は、売主様はお隣の方とかなり険悪な状況だったらしく、そのためにマンションを退去したということでした。
きっかけは、売主様のハムスターがお隣のバルコニーに脱走したことでした。
お隣の方はそのことでかなり腹を立てていたようですが、売主様は大したことでない、そんなに怒るなというようなことを言ったらしい。
それから嫌がらせが始まったとのこと。
結論から言うと、
売主様が弁護士に依頼して、弁護士を介して話をしたところ、隣の方が扉に卵を1パックぶつけて割ったということがわかりました。
もう二度としないと念書を書いてもらいました。
経緯をきちんと買主様に告知し、少し価格は下がりましたが、無事に売却をすることができました。
不動産会社の担当者には伝えておこう
売却の依頼を受ける際には、必ず近隣とのトラブルはないかをお聞きしています。
あらかじめ知っておくことで、近隣の方へ配慮ができますし、買主様へ告知すべきこともアドバイスできます。
売主様からお聞きしたことで、トラブルと言えないが告知すべきかどうか、微妙過ぎる事案もあります。
例えば、
車で帰宅すると、必ず向かい側にお住まいの老夫婦がレースのカーテンを開けてこちらを見ているので、見張られているような気分になるんです、とか
↑不審者でないか見てるだけかもしれません。
隣のご夫婦がかなり大声で喧嘩をする、たいていはご主人がパチンコで負けたときで、窓を開けていると、喧嘩の内容がわかるんです、とか
↑近所トラブルでなく夫婦のトラブルでしょう。
不動産を売却をするときに、近隣関係でトラブルになりそうなことは、あらかじめご相談下さい。
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