中古住宅の建物評価の実態ご存じですか? part2
前回、『中古住宅の建物評価の実態ご存じですか? part1』でお話ししましたが、中古戸建住宅の経年減価の計算方法は下記になります。
建物の減価額=再調達原価×経過年数÷耐用年数
これまでの不動産市場では、耐用年数の設定においては、木造住宅の場合、他に根拠がないため税法に基づく財務省令上の耐用年数である22年等を参考にせざるを得ず、20年~25年の経済耐用年数を設定してきました。
また、再調達原価については、木造なら1㎡あたり○○○,○○〇円と決められた数字を使っていました。
ところが、当たり前のお話しですが、木造でも坪40万円のローコスト系から坪100万円の高級住宅があります。
躯体の違いだけでなく、屋根・外壁などの外装材のグレードの違いや、室内の設備の違いもあります。
さらに、定期的にリフォーム等を行い、適切なメンテナンスを施した住宅もあります。
これらの情報を基に、再調達原価の精緻化を図ろうとする試みが行われています。
見難いかもしれませんが、下記の資料は国交省のHPから抜粋したものです。
また、公益社団法 不動産流通推進センターの査定ソフトでも各部材ごとに細かく耐用年数設定も出来るようになっています。
これによると、長期優良住宅の認定を取得している場合は、『基礎・躯体』の耐用年数は100年の設定になります。
また、公的な住宅性能評価書を取得している住宅の場合は、その取得ランクにより『基礎・躯体』の耐用年数が決められています。(劣化対策等級2相当:耐用年数50年 劣化対策等級3相当:耐用年数75年)
このソフトの説明書は62ページにも及びます。
確かに、これまでの査定マニュアルに比べ、建物の詳細な情報が入力出来るため再調達原価の精緻化には役に立つと思います。
ただし、個人的には問題点が二つあると思います。
1. 査定ソフトを使いこなすには専門的な建物知識が必要
不動産業者の多くは建築士ほどの建築知識も持っていません。設計図面が完備している建物なら、仕様書等から、仕様書等を紛失している場合は実際の建物を見て部材のグレードを読み取る力が必要です。
私は中古住宅の査定をする場合は、所有者様が保管している設計図書等を全て拝見させていただきますが、全部を読んで把握するには、まる一日かかることもあります。
査定マニュアルに入力する項目のグレードを間違えれば、当然ながら間違った再調達原価が出ると言うことです。
2. 査定ソフトで算出した建物価格は高くなりがち
これまでよりも再調達原価が高くなり、耐用年数も長くなるわけですから、査定ソフトで算出した建物価格は高くなります。
結局は周辺の売出し物件や成約物件の価格を調査して調整せざるを得ないことになります。
ちなみに、現在、3,880万円で販売中の中古住宅をこの査定ソフトに入れると下図のように4,236万円になります。
再調達価格は2,390万円で、その77.96%が残っているので、建物の残存価格は2,124万円という計算になっています。
ところが、新築時の建物価格は、この再調達価格よりも遥かに高いのが実情なんです。
この再調達価格を売主様にお見せしたら???となるのではないでしょうか?
かなり詳細なデーターを打ち込んでも、査定ソフトで算出できる金額はこの程度ってことです。
私が言ってはいけないかもしれませんが、査定ソフトの信ぴょう性って有ると思いますか?
実際、今回、私は査定ソフトの金額を売主様にはお伝えしていません。
また、話しが飛びますが、建物の構造・面積・築年数を入れるだけで出してくれる、『一括査定サイト』や『瞬間査定・10秒査定』なんてシステムの信ぴょう性なんて有ると思いますか?有るわけないのですよ!
建物価格を出すのは、それくらい大変なことなんです。設計図書と実際の建物を見せていただいて、建物状況調査を出さない限りは無理ですよ。
その上で、現在の周辺の販売事例や成約事例と比較しながら売出価格を決めていきます。
最後に、買主様は、中古住宅の購入にあたり、新築住宅に比べた場合の割安感を求めているのが現状です。
アメリカのように中古住宅が1年で15%も値上がるような市場ではありません。
既存住宅の流通を促進したい国交省の考えもわかりますが、やはり買主様は品質に対して安心できる建物を割安に買いたいと思っているのではないでしょうか?
そして、売主様は築年数が経過した建物の場合でも、これまでの0評価ではなく価値を認めてもらえて、そしてトラブルなく売却したいと思っているのではないでしょうか?
関連した記事を読む
- 2024/05/25
- 2023/09/04
- 2023/02/18
- 2023/01/07