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2021年01月25日
知識

心理的瑕疵に関する裁判例

今回取り上げるケースは、土地の売買契約において、土地上に建っていた建物内で過去に自殺があったことを買主に説明しなかったことについて、仲介業者に説明義務違反が認められるかどうかが問題になったものです。

トラブル事例

買主Xは、土地所有者Aから、仲介業者Yの仲介により、マイホームを建てる目的で土地を2,750万円で購入しました。

ところが、売買契約日の約23年前に、本件土地上に有った建物の居住者の1人が殺人事件を起こし、またその殺人事件から約2年後に、建物内で他の居住者により自殺があったことが判明しました。

なお、自殺があった建物は、自殺から約1年後に取り壊され、本件土地は更地の状態でした。

買主Xの主張

仲介業者Yは、本件土地が自殺等にかかる事故物件であることを残金決済時には認識していたのに、その説明がなかった。

Yに対し、説明義務違反を理由に損害賠償として1,800万円余りを支払うように請求しました。

仲介業者Yの主張

①殺人事件は本件土地とは無関係の場所で起きた事件であり、本件土地との関連性はない。

②自殺は売買契約の20年以上前の出来事である。

③建物は自殺から約1年後には取り壊されている。

④その後、本件土地は売買が繰り返され、所有者は幾度となく変わっている。

自殺等の事実は、売買契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事柄ではないため、Yには責任を負わないなどと反論しました。

 

判決

本件は、売主の瑕疵担保責任(現在は、契約不適合責任)が免責された契約であり、仲介業者Yが自殺の事実を把握した時点では手付解除も出来なかったため、仮に、買主Xが仲介業者Yから代金決済前に自殺の説明を受けていても売買契約の解消はできませんでした。

そのため、本件で仲介業者Yが負担した損害賠償の範囲は、代金決済等が完了した状態での交渉を余儀なくさあれたことによる慰謝料相当額とされ、損害額としては150万円にとどまりました。

解説

本判決は、仲介業者の責任を認めた理由の1つとして、自殺の事実が近隣住民の記憶に残っていることをあげていますが、近隣住民の記憶に残っていたのは、自殺の前の殺人事件であり、この殺人事件と自殺の事実が関連付けて近隣住民に理解されていたという事情があります。

単なる自殺の事実のみでしたら、20年以上前の出来事であるなどの事情を考慮し、仲介業者は説明義務を負わないという判断もあり得たと思われます。

さらに、本件では仲介業者が自殺の事実を認識したのが、売買契約後で代金決済前であったという点も特徴になっています。

売買契約時には仲介業者が自殺の事実を把握していなかったとしても、代金決済前に自殺の事実を把握していなかったとしても、代金決済前に自殺の事実を把握したのであれば、仲介業者は買主に対して説明する義務があることを押さえておく必要があります。

最後に、法的判断について

取引物件内で自殺等があったことは、一般的に心理的瑕疵と言われています。

問題は、どのような場合に自殺等の事実が瑕疵にあたると解釈されるのかという点です。

これについては、残念ながら、法律による明確なルールはありません。

自殺の場所や事情、取引の対象となった土地建物の状況、自殺から売買契約までの経過時間、購入物件の利用目的、地域性などを考慮して、個別のケースごとに瑕疵に当たるかどうかが判断されることになります。

この記事を書いた人
堀田 秀隆 ホッタ ヒデタカ
堀田 秀隆
元々は、某トヨタ系企業に就職した技術者でしたが、某ハウスメーカーで営業を、設計事務所で設計を学び、弊社では分譲住宅の設計・施工・現場管理をした後、現在の不動産営業をしております。 この仕事はつくづく「人生相談」に似ていると実感してます。私の経験・知識・人脈をフル動員して皆様のご相談に乗らせていただき、安心したお取引が出来るように全力で頑張ります。
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