登記事項証明書(登記簿謄本)の見方
不動産の売買の際には仲介業者が重要事項説明を行います。その重要事項説明書の中に、「登記記録に記録された事項」という項目があります。
ここに記録されている内容は、聞きなれない言葉が多く、初見では理解するのが難しいこともあります。
今回は、様々な権利が記録されている登記事項証明書の見方を簡単にご説明します。
登記事項証明書の構成
上の登記事項証明書は、弊社の所有地の半田市乙川大規模分譲地(全57区画)の中の1区画になります。
土地や戸建ての場合は構成はシンプルです。
●表題部
●権利部(甲区)所有権に関する事項
●権利部(乙区)所有権以外の権利に何晏する事項
区分所有建物の場合は少し複雑になりますので、今回は省略します。
次に、権利部(甲区)、権利部(乙区)のチェックポイントを説明します。
権利部(甲区)
権利部(甲区)は所有権に関する事項が記録されています。下記のことを確認しましょう!
●現在の所有者と持分を確認する!
登記事項証明書の「権利者その他の事項」で所有者の氏名・住所を確認してください。
売主様の現住所と登記事項証明書に記録された住所が異なることがありますが、こちらは引渡し日までに住所変更登記をすることにより対処します。
不動産を取得後に引っ越しした場合でも、わざわざ法務局に住所変更登記を申請する方はいらっしゃいませんので、このような食い違いが起きます。
●差押登記がないか確認する!
住宅ローンの返済ができなくなると、お金を貸した金融機関が競売の申立てを行い、裁判所を通して売却されてしまいます。
また、固定資産税、都市計画税、国民健康保険料、住民税などを滞納すると、行政から不動産を差し押さえられ競売にかけられてしまいます。
差押登記が残ったままの不動産を引き渡されると困りますので、売買代金を使って差押登記をしっかり抹消できることを確認しなくてはいけません。
差押登記がある場合には、どうやって抹消する予定なのか仲介業者に確認してください。
●所有権移転請求権仮登記がないか確認する!
仮登記が本登記になると、甲区と乙区に登記された後順位の権利は抹消されてしまいます。
つまり、売買代金を支払って引渡しを受けたのに、所有権を失ってしまう可能性があります。
上の登記事項証明書をご覧になっていただくと、所有者の住所・氏名が「愛知県刈谷市末広町一丁目2番地7 株式会社堀田土地」なのが確認できると思います。
もちろん、差押登記・所有権移転請求仮登記は設定されていません。
権利部(乙区)
権利部(乙区)は所有権以外の権利に関する事項が記録されています。
具体的には下記のような権利が設定されています。
●抵当権・根抵当権
●地上権・地役権
●賃借権
●配偶者居住権 etc
●抵当権・根抵当権
不動産を購入する際に住宅ローンを組みますよね?この際に金融機関は購入するマイホームに抵当権を設定します。
もし、返済が滞り、返済不可能と判断された場合は金融機関は抵当権を実行してマイホームを競売にかけ、優先的に返済をしてもらうことができます。
抵当権には順位があり、当然、順位が先の抵当権者が優先になります。
根抵当権は商売をしている人が利用するものです。商売をしていると、融資や返済を繰り返すものです。
その度に抵当権を設定・解除を繰り返していたのでは大変ですし、登記費用もかさみます。
そこで、極度額という枠の範囲であれば、毎回登記しなくても大丈夫にしたのが根抵当権になります。
抵当権・根抵当権は借入をした時の状況が記録されています。ですから、抵当権・根抵当権が記録されていても債務が残っているかはわかりません。
住宅ローンの場合は、債務を全額返済時には金融機関の担当者が抵当権抹消書類を準備する際に、司法書士を紹介して抵当権抹消登記までするとは思いますが、債務を完済する際には気を付けましょう。
●地上権・地役権
他人の土地を利用する権利です。刈谷市でよくあるのは、土地の上空に高圧電線が通っている場合に、中部電力の地役権が設定されています。
地役権が設定された土地の場合は、計画する建物の高さが制限されます。
この権利は所有権を制限するものですが、登記の抹消はできません。買主様は設定された権利を引き継ぐことになりますのでご注意ください。
●賃借権
土地を借りる権利です。個人間の土地賃貸借の場合に必ずしも登記はされていません。
お店屋さんが事業用で土地を借りる場合は賃借権の設定をしていることが多いです。
●配偶者居住権
2020年4月1日施行の民法改正で創設された権利です。死亡した人の配偶者は「住み慣れたマイホームで過ごしたい」と考えますよね。この要望を叶えることが目的になります。
長期の配偶者居住権には財産的価値があり、所有者の所有権を制限するため、乙区に登記されることになりました。
まだ私は実際に配偶者居住権の設定された登記事項証明書を見たことはありません。
不動産売買条項の「負担の消除」を説明します
不動産売買契約書の契約条項には次のような記載があります。
「売主は、本物件の所有権移転の時期までに、抵当権等の担保権及び賃借権等の用益権その他買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を消除する」
実際のところは上記の権利が設定されていても所有権移転登記が出来てしまいます。
しかし、仲介業者が間に入る不動産売買では、買主様の権利の保護の為に相当気を付けています。
登記事項証明書の説明をした際に、買主様から、「この物件は抵当権等がないから安心だ!」と言われることがありますが、登記事項証明書の取得日には権利は設定されていなくても、いつ設定されるのかわかりません。
その為、引渡し日当日の朝にも司法書士は登記事項証明書を取得して、売買する物件に買主様の所有権を阻害する権利が設定してないかを確認します。
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