契約前に書こう、読もう「付帯設備表」
「付帯設備表」は「物件状況報告書(告知書)」とともに売買契約書の付属種類になっています。
不動産売買契約では、売買物件の設備に関する状況等が売買契約時にどのような状態であるのか、またどのような状態で買主様に引渡すかを明確にしておく必要があります。
売買契約時に売主様に記載をお願いする仲介業者もいますが、「付帯設備表」や「物件状況確認書(告知書)」の内容によっては、買主様は購入を見合わせることもあり得ますし、売主様・買主様が顔を合わせる売買契約日に気まずい思いやトラブルになるのは非常に嫌なものです。
弊社では、事前に買主様に説明をしております。その方が間違いなく重要事項説明や売買契約はスムーズに終わります。
付帯設備表のひな型(土地建物)
付帯設備表のひな型(マンション)
記入時の注意事項
売主様は普段生活しているマイホームでは、故障・不具合に慣れてしまいご自分では認識していないことがあります。
ですから、販売開始前に全ての設備の動作確認を仲介業者と一緒に行い、故障・不具合について把握しておくことが必要です。その上で付帯設備表をあらかじめ記入しておきましょう。
もちろん、家具・エアコン・照明・カーテン等で撤去するのか悩んでいる物もあるかと思いますから、決めかねていることがあれば仲介業者に話しておきましょう。
付帯設備の有無が購入意思に大きな影響となることも多々あります。
ご案内時に買主様と話しが盛り上がり、ついつい置いていきます!と言ってしまった設備を、契約前に撤去します!と言ったり、実は故障していました!と言うと、値引きを要求されたり、最悪の場合契約が無くなってしまうこともあります。
付帯設備表には、「引渡す設備には経年変化および使用にともなう性能低下、キズ、汚れ等があることをご了承ください」と記載してありますが、引き渡し後、告知がないことを買主様が見つけた場合は往々にしてトラブルになります。
もちろん、中古物件にはキズは有るものです。でも、簡単に補修できるキズばかりではありません。
売主様は高く売却をしたいなら、大げさなくらい細かいことまで買主様に報告した方がよいです。
その方が買主様に建物をいかに大切に所有していたかが伝わります。下記のことまで注意して建物を見てください。
●戸・扉・網戸はスムーズに動くか?異音はしないか?
●戸・扉・網戸に気になるキズや穴はないか?
●全ての鍵はスムーズに開け閉めできるか?
●床のキズ、変色、腐りは?
●換気扇の油汚れ、吸い込み具合?
●床暖房、食洗器、浴室暖房乾燥機、給湯器、モニター付きインターホンなどの付加価値のある設備は正常に動くか?
●エアコン、照明器具等のリモコンの有無? etc
付帯設備は毎日使う物です。ですから、細かいことまで買主様は気になります。
故障・不具合がある場合は、買主様は設備の交換やリフォーム工事を行うことになり予想外の出費となります。
また、付帯設備表に記載して有った残置物をうっかりして撤去してしまった場合も買主様からすれば気分の悪いものです。
中古物件のトラブルの多くは付帯設備になりますので売主様・買主様ともにお気を付けください。
付帯設備に保証はあるのか?
昔は「現況引渡」が原則でした。ですが、契約時には故障していなかった設備が引渡し時には故障したり、キズを付けてしまうこともあります。これではトラブルになりますよね。
その為、現在では下記のような内容の契約書が多くなっています。
●売主は買主に対し、別紙「付帯設備表」中「設備の有無」の欄に「有」とした各設備を引渡しますが、「故障不具合」欄で「無」とした主要設備に限り、使用可能な状態で引渡します。
●売主は買主に対し、設備について契約不適合責任を負いません。ただし、「故障不具合」欄で「無」とした主要設備については、引渡完了日から7日以内に通知を受けた故障不具合に限り、補修する責任を負います。なお、補修の範囲は、調整・部品交換とし、消耗品(電球・電池・ゴムパッキン等)については免責とします。
◆大手不動産業者の中には設備保証を付けている会社もあります。ただし、当然ながら全ての設備について保証されるわけではなく、保証期間や保証額の上限もあり満足できるものとも言えませんのでご注意ください。
◆それよりも、購入後、年数により後々交換の可能性の有る設備等をしっかりと教えてくれたり、良いリフォーム業者を紹介してくれる仲介業者で購入した方がいいのではないでしょうか。
居住中物件にあるトラブル
居住用物件の場合は、引越し後に仲介業者は当然ながら物件のチェックを行います。この際に、案内時には確認することの出来なかったキズ・汚れ・不具合が見つかることがあります。
正直、このトラブルの解決が最も大変なんです。私が買主の仲介をした場合だと、売主と売主側仲介業者は経年劣化だと言うこともあります。
私の判断としては、家具をどかしたことによる、フローリングやクロスの色あせは仕方ないと考えます。
ただし、壁に大きな穴が有った!床が腐っていた!等の修理費用が高額になるようなことが有った場合は売主様に補修義務があると考えています。
したがって、弊社の契約書には次のような特約事項を入れています。
◆売買契約後、売主が建物から引越した後で、売主・買主・仲介業者は立ち合いのもと本物件の確認をするものとします。その際に、売買契約時点で売主・買主が認識していないキズ・汚れ・不具合が見つかった場合は、その傷・汚れ・不具合が軽微なものでなく明らかに業者に修理を依頼する必要があるものの場合、売主の責任と負担により修理するものとします。ただし、その修理に時間がかかり引渡し日までに終わらない場合は、買主はそのことに異議を申し立てないものとします。
上記の特約内容は物件の築年数等により試行錯誤し変えています。築5年以内の物件であいっかり高値で売却した物件については厳しくすることもあります。
その高い付加価値を買主様も認めてくださったのですから。
例えば、下の写真の物件ですが、築2年です。売主様も綺麗好きで建物に愛着がある方でした、引越し後にLDKの壁クロスと子供部屋のクロスにキズ・汚れを発見されました。
買主様からではなく、売主様から「気持ちよく買っていただいたのでしっかり直したい」とのお話しをいただきました。
買主様は子供部屋は壁の一部のみを補修すると思っていたのですが、全部を張り替えしてくれたので買主様は大変喜ばれました。
引渡し後、多少の不具合は有ったものの、買主様は売主様の契約から引き渡しまでの対応に感謝して見えましたのでトラブルにはいたりませんでした。
このように、対応の仕方によりお互いに気持ちの良い売買になり、買主様も大事なご自宅を譲ってくれた売主様にも感謝し、この土地建物にも深い愛着が湧くものです。
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